システム指向設計の研究例




 環境変化に適応するのための一般化手法の構築 佐藤圭二

 実環境において,地震などで鉄道,道路のインフラが機能停止した場合,早急な路線網構築が求められるが,路線状況は時間と共に変化し,路線のパフォーマンスが低下してしまう.しかし,その路線網を大幅に変更してしまっては利用客の混乱に繋がり,効率的ではない.その他にも,人の勤務シフトを作成した際に,急に勤務が不可能になってしまう場合に,わずかな修正で勤務シフトを再構築することが望まれる.具体的には,求めた解が環境に適応出来なくなった際に,出来るだけ少ない変更で環境に適応出来るような解が求められる.

 これらの問題を解決するために,本研究では学習分類子システム(Learning Classifier System)の概念である一般化(generalization)に着目する.学習分類子システムの一般化とは,与えられた環境の中で,重要な部分とそうでない部分(don’t care)を識別し,ルールの中で変更できる属性を見いだすことである. しかし,学習分類子システムの一般化は、一般化された部分は取りうる値のどちらでも良い,という表現方法であるため,どちらか一方だけある値を取る,という表現が出来ない.路線網などは一定の制約条件を満たす必要があるため,一カ所だけがどの値もとっても(一つの停留所があってもなくても)よいという問題ではない.さらに,多目的問題でトレードオフ(人の移動とコストなど)を考慮する場合、どちらか一方を満たすことが重要となる. 以上の背景から,本論文では,”どちらか一方”の一般化の表現としてスワップ型一般化を提案する.




 プログラムが進化する宇宙用CPU 原田智広

 宇宙では地上よりも多くの放射線(宇宙線)が飛び交っており、それがCPUやメモリなどの半導体素子に当たることで、0/1で記憶されているビットが反転し、システムの誤作動や停止を引き起こします。これをシングルイベントアップセット(Single Event Upset: SEU)と呼び、宇宙開発における重要な問題の一つとなっている。従来では、半導体素子に金属シールドによる保護や論理回路の多重化などの対策が取られてきたが人工衛星の重量や打ち上げコストの面で問題がある。

 この問題を解決するために本研究では、宇宙線によるビット反転を利用することによってSEUの対策をする手法を提案している。具体的には、生物の進化シミュレータ「Tierra(ティエラ)」に着目し、プログラムを生物とみなし、宇宙線によるビット反転をプログラムの突然変異とみなすことで進化のメカニズムによってプログラムを維持・進化させる手法を提案している。

現在は機械語を用いた数値計算プログラムの進化とハードウェア上での実現に取り組んでいます。




 競合する複数の船会社間における同時航路編成最適化 東江里子

 船会社にとって最も重要なことは,自社の利益拡大である.その目的を達成するために,各会社が自由に航路を設定してしまうと,競合が発生し利益が低くなってしまうことが考えられる.そこで本研究では,他会社の航路設計を考慮することで各会社の利益が拡大できる航路編成最適化手法を提案する.

 本手法では,他会社の航路と競合した場合に自社の利益が最大になるように遺伝的アルゴリズムを用いて航路を進化させ,それらを繰り返すことで他会社と競合しながらも利益を獲得できる航路の探索を目指す.




 災害時における帰宅困難者のためのバス路線網最適化 北川広登

 大規模な災害時における帰宅困難者は,余震等の二次災害に遭う可能性が考えられるため問題視されている.近年では,帰宅困難者を解消する手段として,バスでを用いた代替輸送が注目されている.災害時は道路の状況が頻繁に変化するため,(1)利用者の移動時間と(2)バス台数に加え,(3)道路の寸断などに対する迂回路線等を考慮したロバスト性の高い路線網の構築が求められる.

 従来の路線網最適化手法では,災害時には現実的ではない長距離の路線が生成されるという問題点を踏まえ,本研究では遺伝的アルゴリズムを用いた適切な領域分割(クラスタリング)手法を採用し,災害時に適用可能な路線網の最適化を目指す.




 定期便と不定期便の同時多目的路線網最適化 神馬隆博

 航空会社の利益向上を目的とした,航空路線網の最適化を扱う.変動する航空便の利用客数に対応するために,航空会社は季節ごとに航空機の大きさや便数を調整する.その際,航空会社は(1) 1年間通して毎日同じ時刻に運航する定期便と,(2) 時期により運航の有無や時刻が異なる不定期便に分け,別々に最適化している.定期便と複数の月の不定期便を同時に考慮した航空路線網最適化が急務だが, 既存の最適化手法では定期便と不定期便を同時に考慮できない.

 上記の問題を解決するために,本研究では定期便と複数の月の不定期便を同時に最適化する手法を提案する.遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて航空路線網をより高い利益が得られるように進化させる.航空路線網を遺伝子で表現し,遺伝子を変化させることで路線網をより利益の高いものへと進化させる.




 災害救助のための群知能アルゴリズムの研究 高野諒

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 災害時におけるボトルネック解消に向けたバス路線網最適化 森本紗矢香

 地震などの大規模な災害が発生した時,主要交通網である鉄道の運休によって,首都圏でも約500万人の帰宅困難者が発生してしまいます[1].鉄道に変わる交通手段として,道路上を走行する路線バスは,1)走行路に点検を必要とせず,2)路線網の変更が容易であることから,非常に注目されています.しかしながら,普段通りの路線バスの運行では輸送可能人数に限りがあり,災害時にバスを待つ利用者が停留所付近に滞留してしまう,ボトルネック現象の発生が考えられます.この現象は交通渋滞・事故などの二次災害に繋がる恐れがあり,早期解消が重要です.

 本研究では,既存のマルチエージェントシステムによるバス路線網修正手法[2]に対して工夫を加えることで,ボトルネックを早期に解消する路線網への修正を可能とした,”ボトルネック解消のためのバス譲渡と利用者の重み付けによる路線網最適化 手法”を提案します.具体的には,1)ボトルネックとなりうる停留所に多くの路線が乗り入れるように,個々の路線エージェントの進化を促し,1)災害時を想定するために,バス台数の増減を廃止して,路線エージェント間における譲渡によって適切にバスを配分します.

[1]http://www.bousai.metro.tokyo.jp/kitaku_portal/1000672/1000674.html [2]http://id.nii.ac.jp/1001/00060696/




 自律ロボット群によるメッシュネットワーク自動構築 建部尚紀

今日,インターネットは我々の生活にとって絶対に欠かせない存在となっています.しかし,こうしたネットワーク網は災害時などに破壊されて,使用できない可能性があります.東日本大震災では,携帯電話などが使用できなかったことが記憶に新しいと思います.これにより,家族との連絡や情報収集が困難になり,大きな混乱が発生することが予想されます.このようなときに,臨時のネットワーク網を構築することが求められています.

ネットワーク網を構築する方法のひとつに,通信機能を持った移動ロボットを多数使用する方法があります.移動ロボットは通信基地局として,携帯電話などの通信を中継します.しかし,移動ロボットで通信できる距離は限られてしまうため,通信網を構築したいエリアに移動させる必要があります.本研究では,この移動ロボットを移動させるアルゴリズムについて自律分散的なアプローチで研究を行なっています.




 主従関係に着目した複数移動ロボットにおけるデッドロック回避手法 大谷雅之

 宇宙における作業では宇宙飛行士の船外活動は危険を伴うため,複数自律ロボットによる協調作業が重要視されている. しかし, 国際宇宙ステーションをはじめとする大規模構造物の組み立てにおいては,(1)足場が限られるなどの空間的制限, (2)大域的な情報は常に得られないという通信上の制限から,ロボットの移動を阻害するデッドロック状態が生じ, 構造物の組み立てが停滞するという深刻な問題が起こる.

 そこで,本研究ではこれらの問題を解決するために,複数ロボットの2台1組を1単位としたロボット間の主従関係を導入し,それらを交換することによってデッドロックを回避する手法を提案する.つまり,提案手法は主従関係交換を行うことにより知的な協調行動を導き,デッドロック状態を解決できるという利点を有している.特に宇宙空間ではロボット間の通信故障が起こるとミッションが達成できないという問題が生じるが,提案手法は局所情報のみを用いてデッドロック回避できることから, 提案手法の通信故障への耐性を解析し,提案手法のロバスト性を検証する.

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